CFOの存在と必要な力|株式会社ファイントゥデイホールディングス
エスネットワークスの共同創業者であり、現在、株式会社ファイントゥデイホールディングスにて取締役CFOとして活躍の場を広げている須原伸太郎氏にお話を伺いました。「CFO領域」の発展にこだわりを持って行動し、エスネットワークス現社長である高畠とこれまで苦楽を乗り越えてきた2人のセッションをぜひご覧ください。
※掲載社員の仕事内容・部署は取材当時のものです
CFOの役割と重要性
▶ 高畠
2021年1月の新年キックオフMTGの際に須原さんのエスネットワークス(以下、es)代表取締役社長の退任が発表され、その後2021年3月の第1QキックオフMTGにてファイントゥデイ(以下、FT)CFO着任が発表されました。その際に「esが掲げるMISSIONのど真ん中を体現できると思い、新たなチャレンジをする決意をした」というお話をしていただいたと思います。それから約1年半が経過しましたが、まず挑戦を受けてよかったかどうかでいうといかがでしょうか。
▶ 須原氏
よかった面もあるし悩む面もある日々を過ごしています。esで長年、社長業をやりながらCFOの輩出をMISSIONに謳いメンバーがCFOに挑戦をしていく一方で、自分自身がクライアントのCFOとして、現場の指揮をとっていたのはリーマンショック後までさかのぼる必要があり、この10年ほどesのMISSIONを体現できていないことにもどかしさや、どこかリアリティのなさを感じていました。
という意味で今回、縁あってCFOという役割に挑戦する機会を得て、実践していることは、esの未来にとっても自分にとってもプラスになっていると思っています。
キックオフミーティングで話をした「MISSIONのど真ん中を体現する」というのは本当にその通りで、これまでesの社長として思い描いていたことはFTのCFOとしてそのまま実現できています。例えば、FTに着任した当初はバックオフィスそのものが存在していなかったので、CFOとして理想の組織の立ち上げから始められたことも大きいですね。
▶ 高畠
ゼロベースという意味では、当社を立ち上げた頃のような動きをされていますね。また、そういう依頼を受けることも過去いくつもありました。
須原さんのおっしゃる通り、当社が掲げるCFOは単に財務や会計のスペシャリストではなく、人事やITといった領域を含めたフルレンジのCFOを理想としているのでまさにその理想を体現されている様子が伺えます。
▶ 須原氏
先ほどお話した通りバックオフィスの立ち上げは、文字通りメンバーがゼロの状態からはじまっています。そのため財務・経理・法務・総務の各分野のヘッドを私が採用し、その後にスタッフを一緒に採用し…、とまさにes起業時以来の立ち上げをCFOとして経験しました。
もうひとつ、FTにはCEOがもちろんいるので、私が「CEO(経営者)を支援する」という意味でもMISSIONを体現できると思っています。一方で実際にCFOをやってみて気付いたこともます。
「Devil's Advocate(悪魔のささやき)」という言葉をご存知でしょうか?文字だけ見るとなんだか怪しい言葉に見えますが、例えばCEOの戦略や方針に対して経営陣や現場から反論がない場合にあえて逆のことを言い、「本当に大丈夫か」といった風にあえて水を差しにいくという意味の言葉です。この「Devil's Advocate」という言葉を実践するのはまだ私にとっては課題だと思っています。というのも、基本的に素直な人間なので(笑)。CFOをやる上で経験や知識などのナレッジを活かしていくことは当然ながら必要なのですが、それと同じくらいメンタル面の育成が非常に重要だと思います。
▶ 高畠
実際にCFOをやってみて、須原さんが考えるCFOに向いているキャラクターはどんなものでしょうか。
▶ 須原氏
笑って偽悪的なことが言える人ですね。真面目さも大切ですがそれだけでは成り立たないと思っています。
▶ 高畠
たしかに須原さんは偽悪的ではないかもしれませんね(笑)。
▶ 須原氏
はい(笑)。逆に言えば、そこまでこだわる必要もないかもしれないとも思っています。自分なりのストレートフォワードなやり方を模索している最中と言えるかもしれません。いろんな考え方や行動を自然と試してみようとしていますし、少しずつ結果も出てきているようにも感じます。
例えば現在、取引している金融機関の方々や株主からは信頼を得はじめていると感じています。ステークホルダーと向き合う際に「実直に向き合う」ことを心掛けた結果が出ているのかなと。実際に金融機関の方々からも「須原さんだから、信頼しています」という言葉をいただいたことがあります。
▶ 高畠
なるほど、須原さんのストレートフォワードな性格がステークホルダーにアカウンタビリティーを持つというCFOの機能として役に立っており、これからもブラッシュアップされるということですね。
話が変わりますが、FT社はCXOを取り入れていますよね。CFOと他のオフィサーの違いはなんだと思いますか。
▶ 須原氏
CFOが他のオフィサーと決定的に違う点は「数字」と「お金」の専門知識を持っていることです。「数字」と「お金」はどの分野においても必要な共通言語であり、私の経験と知識を活かせる場面が非常に多いです。英語が使えるとビジネスで有利なのと同じように当然ながら共通言語が扱えることは強みであり、どのオフィサーともスムーズにコミュニケーションをとることができます。
例えば、FTでいうとR&D本部の方は研究開発のことは詳しいですが、お金と数字の専門家ではないので、経営のアウトプットであるB/SやP/Lへの接続をとりづらい。マーケティングの責任者は数字に強い側面があるけれども会社全体の調達と運用を網羅しているわけではないので、CFOのフォローアップが必要です。実際にCFOとして仕事してみて、この点がCFOの醍醐味の1つだと思いました。
esの前社長の視点で回答すると、数字とお金(Finance)という共通言語をesは基本事業にしているのでこのケイパビリティを身に付けることができれば市場価値は間違いなく上がると思います。
▶ 高畠
たしかにおっしゃる通りですね。esの話になりますが、数字に強いのは私も自信を持って言えることであり、その結果として業界業種の区別なくクライアント対応ができています。その点はCFOの共通言語を使えるという点とも一致する部分ですね。
須原さんはFTでCEOパートナーであるCFOとして専門家として仕事をしながら、マネージャーであり、管理部門の長でもありますよね。ゼロから立ち上げたチームでの楽しさはいかがでしょうか。
▶ 須原氏
自分一人でできることには常に限界があると思っています。私は実務を突き詰めてやるタイプではないので、立ち上げの際に理想とするメンバーを集めるため採用活動はかなり想いを込めていました。その結果、法務・総務・財務・経理に実務能力も備わったスペシャリティの高い人を集めることができ、現状うまく機能していると感じています。何か指示をすると求めていたアウトプットが出てくるのでやっていて楽しいですね。
結局、マネジメント力が必要で、その力は時に想定以上のパワーをチームにもたらします。「人から信頼されてなんぼ」「求心力が重要」という点については、esでのあらゆるマネジメント経験を通じて得ていたのでいま活かされていると思います。コンサルタントとしてプロジェクトをマネジメントすることの延長線上にCFOとしてのマネジメントがあると思っています。
▶ 高畠
本当に大事なポイントだと私も思っています。立場が違うだけでやっていることは大きく変わらないので、どんな立場になっても行動できる人にならないといけないですね。
ちなみに須原さんは、CFOとして今後チャレンジしたいことや目標などありますか。
▶ 須原氏
先ほど話した共通言語を使える能力を活かしてCFO領域から会社を成長させていきたいと思っています。ただ、ステークホルダーが本当にたくさんいるので緊張とストレスが続く時間も長い。ですので、CFOを生涯現役で続けていくかどうかは定かではないですね(笑)。現状マイルストーンとしておいている目標がいくつかあり、例えばM&Aやリファイナンス、その先のIPOに向けた準備を日々行っています。CFOの仕事の特徴でありおもしろさは、将来に向かって、既存の事業とうまく噛み合うように事業をリードし1+1=「2」ではなく、3・4・5…といった形でより大きな成長のきっかけを作ることができる仕事であることだと私は思っています。ここから先はその実現に向けて突き進んでいきます。
CFO、経営者輩出を謳うエスネットワークスについて
▶ 高畠
現在、FT社のプロジェクトに当社も参画していますが、発注者としてesを見た時にどう感じていらっしゃいますか。
▶ 須原氏
会計の領域のコンサルティング会社としては立ち位置や顧客に対するポジションが最も近いとこにいるのは間違いないと思います。es以外にも大手を含めて複数のコンサル会社に参画していただいていますが、正直、先生稼業に感じるコンサルタントの方もいらっしゃいます。
その点esは創業以来、得意としているハンズオンスタイルのコンサルティングを武器に顧客に近い位置に立ってくれるのでそこは大きな違いだと思います。もうひとつ科学的な話ではありませんが、esのコンサルタントにはなんとなく明るい人が多い、という声をFTSのメンバーからもらったのは印象的でした。
一方で弱みももちろんあると感じています。クライアントとの距離が近く、そして深く顧客の理解をしてくれていることが影響してか、他のコンサルティング会社と比較すると貪欲さが不足している印象があります。CFOの基礎スキルを持っているメンバーばかりのため、オーダーに対してはかなりスピード感を持ってアウトプットしてもらえる点は満足していますが、PMO的な仕切り役を貪欲に掴み取りに行く姿勢は他社と比べると薄いと感じています。
▶ 高畠
極端にいうとCFOではなく会計屋になってしまっている時があるということですね。そこは我々の目指す姿を追求するべく、教育、機会含めて改めて私が力を入れないといけないことだと感じました。率直なご意見ありがとうございます。
人材育成について、esは長年「CFOを科学的に育成する」ということを考えてきました。実際に複数のメンバーを経営者やCFOとして輩出している実績もあります。日本におけるCFOの領域は会計や財務はもちろんのこと、人事、IT、法務などのハードスキルで構成されている部分が多く、その考えは今も変わっていません。
一方でこれまでの須原さんのお話から、ソフト面の悩みや葛藤、そしてプレッシャーを乗り越えるといったソフト面の力を求められる場面が多くあるように感じました。実際に須原さんはCFOとして輩出された訳ですが、CFOを科学的に育成するという考えは輩出された身としてどう思われますか。
esでは「2030年経営者輩出100名」を目指してメンバー育成を目指しており、これまで以上に人材育成に強化していたいと考えているためぜひご意見をいただきたいです。
▶ 須原氏
まず科学的に育成できる割合が一番高いCXOはCFOであるという点は、esの社長当時はもちろん、CFOになった今も変わらず思っています。ハードスキルを身に付けることでCFOに必要な能力の半分は満たすことができるはずです。
しかし残りの半分はソフト面(キャラクター)のなので、場を用意して機会を与えることが必要だと思います。この部分については科学的に推し量ることができない領域のため、当然失敗することも多いでしょう。そんな時も戻ってくる場所としてesが存在していることが大事だと思います。
▶ 高畠
須原さんのおっしゃる通りで、esのメンバーには失敗を恐れずに挑戦してほしいですし、例え失敗したとしても会社としては受け入れていきたいです。しかし、ただ「失敗した」と終えるのではなく、しっかりと振り返りそして反省し、それを糧に成長してほしいと考えています。
私が須原さんの後継としてesの社長に就任後から取り組んでいることは、意図的に失敗談を社員に伝えることです。まさに先ほどお話したようなことをメッセージとして発信し続けています。ちなみにこのような考え方を社内では「レジリエンス」と呼んでいいます。今後もそのような機会を意図的に作り出したいと思っています。
▶ 須原氏
CFOの話ではないですが、入り口時点で認知レベルが相対的に高い人と低い人を10年間競わせた結果、レジリエンスにあたる力は当初、認知レベルが低かった人の方が逆転する傾向にあるという話を聞いたことがあります。認知レベルは後天的な学習や経験によってキャッチアップできる一方、メンタルやキャラクターについては、その方が育った環境によって左右されるかもしれません。
これをCFOで当てはめると科学的な力はどこかのタイミングで差がつかなくなるのだとも思います。決してesでの経験が無意味になると言いたい訳ではないのですが、ハード面ばかりを強化してもどこかで頭打ちになるのだと思いました。ソフト面のレベルを上げることがCFOのみならず、経営者を目指す上で必要になるポイントですね。
▶ 高畠
ありがとうございました。「CFO」という切り口から様々なお話を伺うことができ、とても勉強になりました。
将来、経営者やCFOを目指している方に見ていただけると嬉しいですね。
須原さん、これからもFT社のCFOとして、またesのOBとしてもグループファンダーとしても長く深いお付き合いをよろしくお願いいたします。