後編|堀理事・上羽課長×岩本・吉田|変革に向けた現場での取り組み

後編|堀理事・上羽課長×岩本・吉田|変革に向けた現場での取り組み
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利益を追求し地域に還元する社会福祉法人の経営改革
〜人的資本重視の経営の推進〜  

社会福祉法人として前例のない改革を進めてこられた福知山学園の皆さまとともに、当時、変革に向けたご支援をご一緒させていただいた日々が今も鮮明に思い出されます。今回、福知山学園の松本修理事長様が「『公金頼み』と決別する 社会福祉法人の正しい経営」と題する書籍を発刊され、社会福祉法人業界に対する想い、そして福知山学園の将来を見据えた経営改革の方向性などを熱く述べられております。その経営改革の一部をご一緒させていただいた当事者として今回、書籍発刊の想いや当時の振り返り、そしてその後の変化などについてお話を伺ってまいりました。 
※掲載社員の仕事内容・部署は取材当時のものです

福知山学園バリューアッププラン・法人サポートセンターの役割 

吉田 

福知山学園のバリューアッププランでは、2020年から本格的な組織改革に着手され、そこにエスネットワークスも福知山学園の法人サポートセンターに常駐支援という形で参画させていただきました。改めて、法人サポートセンターの担う役割を教えていただけますでしょうか。 

堀理事 (財務担当)※以下、堀理事と略称

一言でいうなら、経営にとってのブレーンであり、施設にとってのサポーターだと思います。各施設や経営層が活動しやすいように法人サポートセンターが働きかけ経営トップのメッセージを伝えていくことと、各施設が自律的に経営・運営できるようなサポートをすることが重要な役割だと思っています。 

岩本 

我々の関与開始はちょうどコロナ禍という未曽有の事態に直面した時期で、おそらくどこよりも早くどのように感染を食い止め、または拡大を防ぐかをという対策をトップダウンで理事長が発信されていて、それを法人サポートセンターが主体となり、様々な想定のなかで、我々も一緒に議論し奔走した記憶があります。その際も施設の皆さんの意見をちゃんと聞き、寄り添った対応をされていて、これらの活動がまさに緊急事態においても施設を止めないためのブレーンとサポーターとしての機能だったと感じます。 

堀理事 

コロナ禍初期は特に難しい判断も多く、法人として旗を振って一丸となって迅速に対処することが重要で法人サポートセンターとしても大変な時期でしたがエスネットワークスの柔軟な対応は大変ありがたかったです。 

吉田 

そのような重要な役割を担う法人サポートセンターで、我々がご一緒した最初の取組は法人サポートセンター内の人事総務部立ち上げでしたね。今まで現場で活躍されていた方に研修と面接を受けていただき、その中から法人サポートセンターの一員を選抜し、それ以外の方はサポートメンバーとして現場と経営をつなぐ役割を担っていただくというこの体制構築の取組は、今回出版された書籍でも触れられている通り、福祉と経営両方を理解した人材の重要性を意識されたものだったと感じます。当時選抜された上羽課長はどのように感じていましたか。 

上羽課長 

めちゃくちゃプレッシャーを感じていました。(笑)
 元々、現場で仕事をしていたため新たな仕事を覚えるという意味でも右も左も分からず、加えてコロナ対応と本当に全てが大変だったと記憶しています。ただ、今回選抜されなかったメンバーもサポートメンバーとして定期的に相談したり共に議論したりできる座組だったことと、これまで一緒に働いていた周囲のメンバーからも、元々の関係性があるからこそ各施設のリアルな状況を聞かせてもらえることができました。このようなサポート体制があったからこそ、安心して新たな挑戦に臨むことができたのだと思います。

岩本 

一般的にフロント部門とミドル・バック部門には壁があるものですが、現場を知っている人がミドル・バックをしっかり支える存在になることで恐らく現場の皆さまも心強かったでしょうし、双方コミュニケーションも取りやすかったのでしょうね。HRBPという事業をドライブさせるための人事機能の必要性が語られることがありますが、現場から法人サポートセンターのメンバーを選抜し、現場にもHUBとなるメンバーを配置する取組は、「施設と伴走する人事」を機能させるためにも重要な役割を担っていましたね。

堀理事 

組織変革に着手するという非常に重責を伴うプロジェクトにおいて、上羽課長の存在は非常にありがたかったです。特に「1人1人の従業員がいかに幸せに働ける環境を創るか」を考える場面において、上羽課長の存在は大きかった。現場が主体で、現場の皆さんが自発的に考え発信し、私たちがそれを汲み取り実行に移していくことが重要と考えていた中で、現場を理解し寄り添い関係性を築いてまさに施設と伴走して物事を円滑に進めてくれました。

上羽課長 

右も左も分からないような状況の私にとって、エスネットワークスの皆さんの存在は大きかったです。常駐という、すぐ隣にいてくれるスタイルで、プロジェクトのテーマだけでなく日々の起こる問題や悩みについてもいつでも相談できる環境だったことは実務面だけではなく、精神的にも助けていただいたと感じでいます。

岩本 

そういっていただけるととても嬉しいです。実はコンサルティング会社の支援は、ほとんどが経営の方々とだけ話をして、取り組み方針や内容を決めてしまうことが多いです。しかし、御社との取り組みを振り返って一番良かったと感じていることは、法人サポートセンターに選抜された皆さまがいて、現場にはサポートメンバーがいて、皆さまが主役の中で、我々とあーでもない、こうでもないと議論を重ねることができたこと。そのプロセスを経た結果、内発的に物事を変えることができる取り組みに繋がり、それが数年たった今、成果として表れてきているんだろうと感じます。

堀理事

多少時間はかかりましたが、一人ひとりの成長と今後の持続性という意味でも本当にすごく面白い取り組みだと思いますし、現場の皆さんが主役になっていると実感できることが、将来的な福知山学園の魅力にも繋がると考えています。
勿論短期的には、法人内だけでは進められなかった各プロジェクトを推進してもらえたことも、大変ありがたかったです。

福知山学園バリューアッププランを通じて変化を感じていること

岩本 

体制を新たにし、これまで様々な変化と進化を遂げてこられましたが、その後感じている変化はありますでしょうか。

堀理事

いろいろありますが、まずは経営理念であるMVV(Mission・Vision・Value)の策定による社内風土の変化です。

上羽課長

そうですね、MVVについては法人サポートセンターとサポートメンバーとで一緒になって、福知山学園はこうありたい、自分ならこうしたいといった、本音の意見を出し合いましたし、全従業員の皆さんからもアンケート形式で意見をだしていただいて議論したことをよく覚えています。本当に福知山学園全体で創り上げたなと感じています。

吉田

私もすごく印象に残っています。皆さまから出た意見を経営としてどのように受け止め、どのように福知山学園の経営の本質を言語化するか。かなり理事の皆さまとも議論を重ね、細部にまでこだわって創り上げました。

上羽課長

MVVができた後、それを浸透させることが非常に重要だと考えていましたが、当時一緒に取り組んだ浸透施策の他、MVVに対する想いや自分自身の行動について定期的にチャットツールに投稿する取組を2年半以上続けています。きっと、自分たちが創った、自分たちのMVVだという意識があり、自発的な活動に繋がっているんだと思います。

堀理事

一緒に創り上げていただきましたMVVは、福知山学園にとって重要な要素がしっかり盛り込まれていて、一人ひとりの日々の行動変容にもつながっているので、本当に良い取り組みだったと感じています。

岩本

今、上場企業を中心に人的資本経営が重要視されていて、企業経営におけるヒトの重要さが改めて注目されています。その原点がパーパスであり福知山学園のMVVなんだと思います。とはいうものの、こういった企業の本質を表す言葉が形骸化している企業はたくさんあって、もっと言うと特に地方では人的資本の取り組みを推進できている企業が少ないと感じる中で、福知山学園は当時から、先進的な取り組みをされていたのだと改めて感じています。福知山学園のMVVの策定プロセスでは、ずっと社会福祉法人であり企業であることを念頭に策定する、とおっしゃっていて、理事長と日高の対談でも話されていた通り、利益をちゃんと出しながら社会課題を解決する、地域に貢献する、ということを一貫して志向されていました。正に社会に求められるローカル・ゼブラそのものだと感じましたし、福知山学園の皆さまと共に進めたこのプロジェクトは我々にとっても大きな気づきがあるものでした。

堀理事

もう一つ、印象的で大きな影響があった取り組みは労務改善です。書籍にも書いてある通り、社会福祉法人は従業員の自己犠牲に甘えるような経営になっているケースが非常に多い。しかし、私たちは施設運営は人で成り立っていることをしっかりと認識し、働く皆さんが満足して生き生きと働く環境を整え、持続的な経営をしたいと考えています。なので、一度現状の労務課題をしっかりと把握し改善していくことが重要だと考えました。

吉田

我々のご支援の最終段階でしたね。一通りの労務調査を行い、洗い出した課題に対して、優先順位付けと解決方針を決めて実行していく。ここでも毎日のように議論したことを覚えています。

堀理事

労務改善もいろいろなテーマを出していただき、改善計画を立てていただきましたね。法人内で改善できることもあれば、そうでないこともあったと思います。その中でも新たな勤怠管理ルールの策定、それに伴うシステムの選定・導入、運用開始までの一連の対応は現場の皆さんの理解を得るということも考えると、一緒に進めることができなかったらきっと難しかったと思います。

上羽課長

その時構築いただき、運用を開始した労働時間のモニタリングは今でも継続して実施しています。今では残業はほとんど発生していませんし、他の社会福祉法人では考えられないくらいの水準での労務管理ができているとよく求職者の方にも言われ、採用面でも求職者にとっての安心材料の一つになっています。
勤怠管理だけでなく、働く人が働きやすい環境、福知山学園で働いていることを幸せに感じてもらえる環境を創るという考えの中で進めてきたバリューアッププランの様々な取り組みの結果がこのような好循環を生んでいるんだと思います。

 エスネットワークスの役割・期待値

上羽課長

改めて振り返ると、本当にいろいろな取り組みを一緒に進めてきたと感じますが、プロジェクトの開始時は実はかなり緊張していました。というのも私は社会に出てから福知山学園の組織しか知らなかったため、社外の方とビジネス上でコミュニケーションを取る機会がほとんどありませんでした。まして今回はコンサルタントの方々と仕事をするということで、よく分からない怖さも感じていたことを覚えています。
しかし、実際にプロジェクトが動き出すと「こんなことまで一緒に取り組んでくれるの?」と思うようなことまで伴走していただいたことはとても印象的で、コンサルタントに対するイメージが変わりました。出来る集団をさらにできる状態にするのではなく、本当の意味で育ててもらったと感じています。

吉田

私からすると、福知山学園の皆さまがうまく我々を使っていただけているなと感じていました。日々起きていることの共有やちょっとした相談等、様々な場面で雑談も含めたようなコミュニケーションの中から積極的にノウハウを吸収しようとする姿勢があったからこそ、エスネットワークスの強みを最大限発揮できたんだと感じています。
また、福知山学園の皆さまが本当に温かく迎えてくださったので、本当に仕事がしやすかったです。現場の皆さまとも気さくにお話ができ、理事長は毎日声をかけてくださり、自分が外部の人間だと感じないくらいの環境だったと感じています。

堀理事

多数の経験と幅広い専門性を有する専門家の知見を取り入れた法人経営全体の仕組構築ということも、大きな期待の一つでした。我々は地方の中小企業、且つ社会福祉法人であるからこそ、不足する情報があるのではないかと考えておりました。また、我々が取り組んでいることは経営であり、様々なテーマで改革を進めていました。エスネットワークスには総務や人事だけでなく、経理財務を含む経営全体を第三者の専門家の視点で見ていただき、他社事例など生きた情報にも触れながら、様々な仕組みやフォーマットを整えて行くことができたので、これからの運営に安心感が持てましたしありがたいと思っています。 

岩本

おっしゃる通り、我々は人事を軸に支援する部隊ですが、ヒトの部分だけを見ていても持続的な成長には繋がらないですよね。共に福知山学園の経営を考えるという関わり方で、人事や財務、BCP対策や業務効率化についても幅広く一緒に検討させていただき我々にとっても刺激的で印象的なプロジェクトでした。

今後の展望

吉田

では、最後に今後の展望について、お聞かせいただけますでしょうか。

上羽課長

私は今、採用関連の業務にも携わっていてたくさんの求職者の方々とお話する機会をいただいています。この方々を採用し、育成していくことが未来の福知山学園の成長に繋がり、地域への貢献にも繋がる。そんなことを想像しながら良い循環を生み出していきたいです。

堀理事

これまでも福知山学園の経営を考え、現場に寄り添った活動を意識してきましたし、このスタンスはこれからも変えず、組織と人の成長のために必要な変化を起こし続けたいと思います。福知山学園の持続的発展の源泉は間違いなく現場で活躍する従業員の皆さんですので、「従業員ファースト」を実現しながら、従業員もご利用者様も、地域・社会も幸せを感じる世界を実現し続けていきます。

岩本・吉田

「人を創る、社会を創る」「誰よりも人と社会を想う企業」
福知山学園のミッションとビジョンを実現し続けるということですね!

本日は、ありがとうございました。

理事長対談|固定概念に捉われない社会福祉法人経営