業務統合を越え、企業融合へ|株式会社フージャースホールディングス
株式会社フージャースホールディングス(以下、フージャース)が2022年11月に実施した株式会社ホームステージ(以下、ホームステージ)の全株式の取得について、エスネットワークスが統合プロセスの支援を実施いたしました。本件の取り組みについて、ともにプロジェクトを推進させていただいた管理本部 経理部 経理課の今西様、和田様にお話を伺いました。
※掲載社員の仕事内容・部署は取材当時のものです
成長可能性を見越し、難易度の高い九州エリア進出に向けたM&A戦略
▶ 牧野
まずは御社の事業についてお伺いできますでしょうか。
▶ 今西氏
弊社は不動産開発から販売、管理まで、社内の言葉で表現すると「製・販・管」といった形で事業を展開しています。マンションデベロッパーとして成長を重ね、現在はマンション管理事業やCCRC事業というシニア向けマンション事業、不動産投資事業、など暮らしに関わるサービスを幅広く展開しています。
▶ 牧野
ありがとうございます。今回、熊本に本社のあるホームステージの全株式を取得された背景についてはいかがでしょうか。
▶ 今西氏
弊社は日本全国で事業を展開しているのですが、九州の一部地域には思うように進出できていませんでした。その中でも熊本エリアについては、台湾の半導体メーカーTSMCの進出が決定しており、それに伴い多数の企業が参入していることに注目していました。企業が参入することにより雇用が増え、それに伴い人の流入が増えることによって住宅需要も増加することが予想されるからです。販路拡大とともに、新規市場へのアプローチを期待できるエリアでした。一方で熊本は、エリア内で経済圏が出来上がっており、新規参入のしにくい市場という難点がありました。そこで熊本進出のためには、その土地に本社を置き、地場のチャネルやノウハウを有しているホームステージとの統合が有効だと判断し、株式取得に踏み切りました。またホームステージ側にも、全国展開している弊社と一緒になることでシナジー効果の発揮が期待でき、相互に価値のある関係値を築くことができると感じていただきました。
スピーディーな業務統合とメンバー融合を両輪で推進
▶ 牧野
統合プロセスの支援を弊社に依頼していただくにあたっては、どのような期待値をお持ちでしたか。
▶ 今西氏
今回、100%の株式を取得し、ホームステージは弊社の連結子会社に該当することになりました。ところが株式を取得した12月は、弊社の四半期決算期でもあり統合プロセスを早急に組み立てる必要がありました。 一方で、ホームステージ側にとっては初めての上場企業レベルの決算となるため、当然のことながらスキルやノウハウが不足しています。さらにホームステージと弊社では決算期が異なり、この点も統合に向けてスピード感をもって変えていくことが必要な事項でした。 弊社のメンバーが現地に行き、統合プロセスと実務の両軸を推進することも一つの選択肢ではあったのですが、ただでさえ繁忙期の中、リソースを割くことは現実的ではありませんでした。そしてなによりPMIに関する知見が私どもには不足していたため、仮にメンバーが現地に身を移したところでうまく推進できるイメージもあまり持てておらず、外部の力を借りることにしました。なお、外部の力を借りるにあたっては、決算対応および管理体制の構築はもちろんですが、それ以上に大切な関心事としては、関与終了後も変わらず我々自身で継続して運用を可能とする仕組みとなっていること、という点でした。
▶ 牧野
実際に弊社のサービスを経験いただいた率直なご意見、ご感想などを伺えますか。
▶ 今西氏
正直、プロジェクトが開始したころは、この専門性の高いプロジェクトを牧野さん、庄野さんといった若手の2人にお任せしても大丈夫なのか、という不安は少なからずありました。弊社の商流は簡単に仕組み化ができないことが特徴で、多くの会計処理について個別対応をしなければならない状態だったため、仕組み化も容易なことではありませんでした。経理部門だけで会計処理を完結させることが難しく、各部門との連携を通じて実態を確認することが必要だったからです。しかし実際にプロジェクトが始まると、弊社の意図を汲み取った上で、ホームステージのメンバーへの働きかけをしてくれたことがとてもありがたかったです。現地の経理メンバーだけではなく、他の部署のメンバーや社外の税理士の方とも非常にいい関係を築いていただいて、現地のスタッフから慕われている様子が伺えたこともあり安心してお任せできるようになりました。改善活動が進んでいること自体も、レポートやミーティング等を通じて早い段階から確認できたこともお任せできた理由の1つです。
▶ 和田氏
実際、御社に入っていただくまではフージャースとホームステージの間で心理的な距離があると感じたこともありました。DD(Due Diligence)のフェーズでは、弊社からホームステージへ必要な書類をひたすら依頼するといった関係性だったため、恐らく良い印象は持っていなかったのだろうと思っています。しかし牧野さん、庄野さんの活動を通じてコミュニケーションの輪が伝播し弊社との距離感も変わったことは大きなプラスでした。
▶ 牧野
お褒めの言葉をいただき嬉しい限りです。おっしゃる通り、スピード感をもった対応は本プロジェクトにおいてとても重要だと感じていました。先ほどのお話に補足すると、ホームステージには5社の子会社があったため確認事項は膨大で、まずは企業理解を深めるために資料を読み込みました。そして実態を知れば知るほど経理だけでは完結できない事項が多いことが分かったのです。他には業務プロセスだけではなく、ホームステージの皆さまの会計スキルの底上げも力を入れるべき点であると考えて、関係性構築のために早期にコミュニケーションを図るなど、さまざまな角度から統合プロセスに着手する方針で動くことにしました。情報が循環しやすい環境作りが必要と感じ、営業事務の方や財務の方々とのコミュニケーションも増すためのフォーメーションを考えたり、オフサイトでのコミュニケーションを増やしました。そんな活動を通じて、徐々に飲み会に参加させていただいたり、プライベートで温泉に連れ出していただいたりと、関係性を強めることができたと感じています。
支援の幅を越えた仲間になれたという感覚すらあり、皆さまの心遣いに助けられたプロジェクトだったと感じています。しかし常駐開始当初は、現地の皆さまも警戒心を持たれている様子を感じていました。関わりのない私たちといきなり一緒に仕事をすることになるため当然のリアクションだと思っていたのですが、話を伺ってみると過去の経験からコンサルタントにあまりよいイメージがなかったようです。今回のプロジェクトを通じてイメージを払しょくできたことは率直に嬉しく思っています。
▶ 庄野
コミュニケーションを重ねることは本当に大切で、執務スペースでは質問しづらいことを、ちょっとした会話を通じて解決の糸口を見つけることができたこともありました。その会話をきっかけに、新たな課題や対応策が見つかりスムーズに進めることができる場面もあったので、ハンズオンならではの良さが存分に生きたポイントだと思っています。
▶ 和田氏
弊社は任せる文化の社風で、年次に関わらずチャレンジして欲しいという考えが強いです。そのためお2人にもあれこれ細かい依頼をせずに、弊社メンバーに近い期待値でお任せしていた部分があったのですが、その環境を楽しんでいただけていたのだと驚きと同時に近しい感覚を持っていただいていたことに嬉しさも感じています。
▶ 今西氏
そうですね、もちろん仕組みは大切なのですが、人を変えていくことはそう簡単なことではありません。しかし、今回のプロジェクトを通じて、弊社と現地メンバーとの距離感の変化を強く感じています。現地のメンバーが前を向いて取り組める雰囲気を作っていただいたことはとてもありがたかったです。まずは現地メンバーのモチベーションを上げること、そして経理スキルの向上にも力を入れていただいたおかげで、牧野さん、庄野さんが抜けた後もしっかり業務が回っている状況となっています。
持続的な成長を見据え未来を創る
▶ 牧野
2022年12月から丸1年が経過し、ホームステージとの統合プロセスは一定、終わりに近付いてきていると思いますが、今後練られている構想などについてお伺いできますでしょうか。
▶ 今西氏
現在、中期経営計画で掲げている内容に沿って事業を推進しています。弊社の強みの1つに東日本大震災をきっかけに取り組んだ地方再開発事業があります。この強みとシニア向けマンション事業を融合させていくことを中期経営計画の1つに掲げています。そのために今回のような株式取得を含む様々な手法でエリア開拓や新規チャネルの創出など新たな取り組みをしていくと想像しています。また、この業界ならではですが、まだまだ紙を使ってやり取りをすることが多く、DXの推進なども中長期的な課題として認識しています。このあたりのノウハウも不足している状況のため、内製化できるものか否かを見極めながら、外部の力を借りることや、そもそもの社内の業務効率化を推進するなど社内の体制構築についても取り組む必要があると思います。その際はぜひ、エスネットワークスさんにはお声がけさせていただければと思います。
▶ 牧野
ありがとうございます。ぜひ機会がございましたら、今回のプロジェクトに限らず様々なコラボレーションが実現できればと思っております。引き続きよろしくお願いいたします。